第22回備後脳卒中ネットワークシンポジウムを開催しました
第22回備後脳卒中ネットワークシンポジウムを2024年9月10日に開催しました。
① NPO法人備後脳卒中ネットワーク大田泰正理事長が挨拶された。
② 脳神経センター大田記念病院 脳神経内科部長 寺澤由佳先生より、地域対策協議会会議における脳卒中パスの集計を報告された。
パスのデータを解析することで、地域医療に根差した診療体制の構築を図ることはとても重要である。急性期施設別パスの回収に関しては、県東部が優秀であった。脳梗塞が70%であるのは例年と変わらない。FIMの集計に関しては、改善が必要と思われる。回復期からのパスは双方向となっているが、生活期からは返ってきていない。生活期の診療を担う先生方やケアマネとの連携がとれる活動が必要である。当法人としては県東部でまとまって活動できていると思われる。今後、回復期生活期の会員からも積極的な発信を希望したい。
③ 特別講演 内容:「脳卒中と歯周病」
演者: 岡山大学 学術研究院医歯薬学域 歯周病態学分野 教授 髙柴 正悟先生
座長: 福山市歯科医師会 副会長 風呂川 彰先生
近年、脳梗塞と虫歯や歯周病についての文献数が増えている。従来は肉眼的な治療が行われたが、感染症検査の後に予防や治療を行うようになった。歯周病は痛みなく進行していくため、手遅れになることが多い。最近の治療は化学療法から歯周再生療法・インプラントとなっている。しかし、インプラントも歯周病になり、脳梗塞患者のインプラント周囲炎のフォローアップは大変である。30%を越える高齢者がいる現在、高齢者に適した予防医療が必要となる。年齢の能力に対応して口腔の衛生管理をシンプルにすることが重要である。
歯周病は認知症・誤嚥性肺炎・糖尿病など様々な症状につながっていることが考えられる。脳卒中関連肺炎のほとんどの患者はグラム陰性好気性桿菌に感染していることがわかった。また、重度の歯周病は急性脳卒中の危険因子であることが示唆された。
脳卒中患者の80%は口腔セルフケアが困難であり、70%は清掃状態が不良であったという文献を紹介された。
大田記念病院にて口腔健康評価ツール(OHAT)導入により、脳卒中患者への口腔ケア介入の有効性を研究している。重症症例・早期・頻繁な歯科介入が可能となったことは一つの成果である。
④ パネルディスカッション「脳卒中患者における口腔管理の課題」
座長: 脳神経センター大田記念病院 歯科部長 松永 一幸先生
議論者: 猪原[食べる]総合歯科医療クリニック 歯科医師 猪原 健先生
福山市地域包括支援センター箕島 主任介護支援専門員 内田 万貴氏
水永リハビリテーション病院 看護師 中川 悠氏
脳神経センター大田記念病院 歯科医師 坪井 綾香先生
助言者: 髙柴 正悟先生
福山市歯科医師会 介護福祉医療・地域連携部委員長 寺島 祥充先生
a. 大田記念病院内での歯科治療について、坪井医師より話された。
2018年より口腔アセスメントと口腔ケアプラン導入による看護師の口腔ケアの標準化を始めた。このシステムを導入したことで、脳卒中の発症から3日以内には歯科介入ができるようになった。脳卒中発症後は1つの病院で治療が完結せず,リハビリ等の目的に応じて療養場所が変化していく特徴がある。このため、脳卒中医療では病院内での多職種連携に加えて、退院・転院後の地域連携も非常に重要となる。
2019年に周術期等口腔機能管理の地域連携パスを導入し、活用することで、自宅退院の患者に地域歯科医院の受診を推奨して退院後も継続して口腔管理をしてもらえるようにした。
2024年4月〜8月までに協力していただいた転院先の病院・施設は27施設で、転院先での歯科継続率は39.3%となっている。
b. 症例を紹介後、パネルディスカッションを行った。
サマリーがあれば、ケアマネが介入しやすいと思う。ケアプラン作成時に家族・スタッフに助言を行う根拠が欲しいという意見が内田氏よりあげられた。
坪井先生からは、情報提供書が必要な部署に渡っていない。療養場所が変わることによる歯科同士の連携の仕組みがもっと良いと有難いとのことだった。
中川氏からは情報提供書をどのように活用できるかが課題であり、ケアの手順書を申し送る機能があれば、回復期として有難いとのことだった。
患者の訴えが無くても歯科が介入するにはどうしたら良いかとの松永先生の質問には、要介護の方に歯科の専門職が定期的に診ることが一番良いと思うとの猪原先生からの回答があった。
更なる改善策として考えられる点には何があるかとの質問には、猪原先生から訪問診療におけるレントゲンの共有があげられた。
寺島先生からは歯科を定期・継続受診する割合が低いことが大きな課題であると言われた。